昔の仕事で、今でもよく覚えている場面があります。
お客さんが、分厚いカタログを見ていた時のことです。
一つのページをじっくり見て、
次のページをめくって、また戻る。
「どれにしようかな」と、少し悩んでいる様子でした。
私はその間、
さっきお客さんが気になっていそうだったページに、
そっと指を挟んでいました。
ほんの一瞬のことです。
お客さんは別のページを見ながら、こう言いました。
「さっきのやつ、どこやったかな?」
その瞬間、
私はすぐにそのページを開きました。
こういう場面で、あれこれ考え続けるよりも、
目の前のことに気づいて動く方が大事なんだと感じました。
不安を考え続けても、現実はあまり変わらないと感じたことがあります。
すると、
「気が利くやん」
と、笑いながら言われました。
本当に、それだけの出来事です。
でも、私はその時、
ものすごく嬉しかったのを覚えています。
誰かに言われたからやったわけでも、
マニュアルがあったわけでもありません。
自分で考えてやったことが、
ちゃんと相手に伝わった。
そのことが、強く印象に残りました。
仕事で評価されるのは、派手なことじゃない
その後、お得意様にこんなことを言われたことがあります。
「湯淺は、何にもできんけど誠実やから信用してる」
当時は少し複雑な気持ちでした。
でも今なら、その意味が分かります。
その人たちが見ていたのは、
能力の高さではなかったのだと思います。
- 相手をちゃんと見ているか
- 途中で投げないか
- 小さな違和感に気づけるか
そういうところだったのだと思います。
「気が利く」は特別な才能じゃない
あの時の私は、
特別に頭が良かったわけでも、
仕事ができたわけでもありません。
ただ、
相手の動きを見て、
少し先を想像しただけでした。
仕事というのは、
こういう小さな積み重ねで、
「この人なら大丈夫」
という感覚が生まれるものだと思います。
今になって思うこと
派手な成果がなくても、
大きな成功談がなくても、
- 相手をちゃんと見ること
- 自分で考えること
- ボールを持ち続けないこと
それだけで、
仕事はちゃんと信頼につながっていく。
あの時の
「気が利くやん」
という一言は、
今でも、私の中で
仕事の原点のようなものになっています。

